にょらいじ／如来寺

一

福島県いわき市平山崎字矢ノ目。松峯山真戒院。福島教区№三五。知恩院末。開山は高蓮社良山妙観。名越派本山、名越檀林として東北地方における修行の中心となり隆盛し、多くの高僧が輩出した。末寺三〇箇寺以上を有する古刹。嘉元年間（一三〇三—一三〇六）真戒比丘尼が善光寺式一光三尊の霊像を鎌倉より持来。当地の豪族山名一族がこれを尊崇し、一寺を建立して安置したのがはじまり。その後檀越だんのつ山名行阿が、好間村小谷迫観福寺で布教をしていた名越派三祖妙観に深く師事し、元亨二年（一三二二）当寺に招いて開山とし、如来寺と称した。妙観はこの地において約四〇年間名越派の教義に基づく布教と著述に専念して基盤を確立。折木に成徳寺を開いた名越派四世良天聖観、山崎専称寺の良就十声、そして聖観の高弟良栄理本は大沢円通寺を開いている。一六世紀、奥州本山は勅願所となった山崎専称寺に移るが、如来寺はなお徳川歴代将軍より朱印二〇石を賜っている。東京国立博物館には、開創の由来となった銅像阿弥陀如来及両脇侍立像（一光三尊式）や絹本著色阿弥陀三尊像一幅が国重要文化財として所蔵されている。また月形函つきがたばこに秘蔵されてきた『如来寺蔵典籍』一四一冊は市文化財となっている。これは妙観のほか良忠や尊観、袋中たいちゅうなど多数の師の著作も含めた名越派伝法のうえで貴重な写本群である。

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【資料】『如来寺文書』、『蓮門精舎旧詞』五〇（続浄一八）、『浄土宗寺院由緒書』中（『増上寺史料集』六）、『磐城志』四（『岩磐史料叢書』上）

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【参照項目】➡名越派

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【執筆者：渡部伸一】

二

栃木県日光市今市。星顕山光明院。栃木教区№二九。瓜連うりづら常福寺五世超誉聖欽の弟子金蓮社暁誉によって文明年間（一四六九—一四八七）に開創されたという。当地は、江戸時代になると日光社参のための宿場として整備・発展し、当寺には如来御殿と呼ばれる将軍の休憩・滞在施設が造られた。そのため、寛永一〇年（一六三三）に三代将軍徳川家光から三〇石の寺領の寄進を受けた。末寺七箇寺と塔頭たっちゅう四箇院を有していた。

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【資料】『浄土宗寺院由緒書』中（『増上寺史料集』六）、『瓜連常福寺志』（浄全一九）

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【参考】今市市史編さん委員会『いまいち市史』通史編一（今市市、一九八二）

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【執筆者：𠮷水成正】

三

金沢市小立野こだつの。龍宝山応正院。石川教区№二一。開山は岌台文公。天正元年（一五七三）に越中国増山に建立。以後高岡を経て金沢卯辰山に移転。明暦二年（一六五六）に加賀藩四代藩主前田光高の御内室清泰院が逝去し、五代藩主前田綱紀より母堂清泰院の位牌所として領地を賜るも、寛文二年（一六六二）に現在地に寺領二〇〇石を賜り移転した。元禄二年（一六八九）鉄砲改めの際に、加賀・能登・越中三国の総触頭ふれがしらを務めていたことがわかる。

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【資料】『浄土宗寺院由緒書』中（『増上寺史料集』六）、『加賀藩史料』（財団法人前田育徳会、一九七〇、復刻版）

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【参考】『金沢市史』（金沢市役所、一九七三）、宇高良哲「浄土宗の触頭制度について」（『法然浄土教の綜合的研究』山喜房仏書林、一九八四）

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【執筆者：高田光順】