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「キャカラバア」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:22時点における最新版

キャカラバア/[悉曇:kha][悉曇:va][悉曇:ha][悉曇:ra][悉曇:a]

真言密教において森羅万象を構成する要素である地・水・火・風・空の五大象徴する五つの種字を列挙したもので、五輪塔卒塔婆の頭部に記される五文字の梵字悉曇しったん文字)、[悉曇:kha](kha=佉=キャ)、[悉曇:va](ha=訶=カ)、[悉曇:ha](ra=囉=ラ)、[悉曇:ra](va=嚩=バ/ヴァ)、[悉曇:a](a=阿=ア)のこと。『大日経疏』住心品に「[悉曇:a]阿字門を地と為し、[悉曇:ra]嚩字門を水と為し、[悉曇:ha]囉字門を火と為し、[悉曇:va]訶字門を風と為し、[悉曇:kha]佉字門を空と為す」(正蔵三九・五八六中)とある。この五つの種字が象徴する内容については空海の『即身成仏義』に『大日経』の一文を釈して「阿字諸法本不生の義とは即ち是れ地大なり。嚩字離言説とは是れを水大と謂い、清浄無垢塵とは是れ則ち囉字火大なり。因業不可得とは訶字門風大なり。等虚空とは欠字の字相即ち空大なり」(正蔵七七・三八二上)とあるのをはじめ種々に説明され、[悉曇:kha]佉字は虚空の意のⓈkha、[悉曇:va]訶字は因の意のⓈhetu、[悉曇:ha]囉字は塵垢の意のⓈrajas、[悉曇:ra]嚩字は言語の意のⓈvāc、[悉曇:a]阿字は不生の意のⓈanutpādaの、それぞれ頭文字にちなむものなどと解説されている。板塔婆の表にはこの五文字を書き、裏面に大日如来金剛界)の種字である[悉曇:vaṃ](鑁)字を書くのは、森羅万象は大日如来の顕現であるとする真言密教世界観を体現するものである。こうした卒塔婆の書式は浄土宗にも受容されている。


【参考】那須政隆『五輪九字秘釈の研究』(大東出版社、一九三六)


【参照項目】➡卒塔婆五輪五輪塔


【執筆者:袖山榮輝】