「大慈悲」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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【資料】『北本涅槃経』一五(正蔵一二)、世親『往生論』 | 【資料】『北本涅槃経』一五(正蔵一二)、世親『往生論』 |
2018年9月17日 (月) 10:08時点における最新版
だいじひ/大慈悲
あらゆるものにふりむけられる仏の広大無辺なる慈悲のこと。大慈大悲また単に大悲ともいう。十八不共法の一つであり、この場合はⓈmahākaruṇāの訳である。慈(Ⓢmaitrī)とは衆生を慈しみ楽を与えるもの(与楽)、悲(Ⓢkaruṇā)とは衆生を憐れみ苦を取り除くもの(抜苦)とされる。『大智度論』二七に四無量心中の慈悲を小といい、十八不共法中の慈悲を大慈悲と名づけるとある。また諸仏の慈悲を大とし、余人の慈悲を小とすると説く。このように、仏の慈悲は凡夫や声聞・縁覚・菩薩の不完全な慈悲(小慈悲)とは区別して大慈悲というのである。浄土教においてはもっぱら阿弥陀仏の摂取利益の大慈悲を指し、『観経』には「仏心とは、大慈悲これなり。無縁の慈をもって諸もろの衆生を摂したまう」(聖典一・三〇一/浄全一・四四)とあり、『無量寿経』上にも阿弥陀仏の慈悲を強調して「如来無尽の大悲をもって、三界を矜哀す」(同二一八/同三)と説かれている。
【資料】『北本涅槃経』一五(正蔵一二)、世親『往生論』
【参考】中村元『慈悲』(平楽寺書店、一九六一)、仏教思想研究会篇『仏教思想Ⅰ愛』(同、一九七五)
【執筆者:杉山裕俊】