「九品印」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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くほんいん/九品印
『観経』に説く上品上生・上品中生・上品下生・中品上生・中品中生・中品下生・下品上生・下品中生・下品下生の九品往生を阿弥陀仏が結ぶ印相として充てたもの。一般的に上生のものを禅定印、中生のものを説法印、下生のものを来迎印と称する。また、これらを視覚的に表現する場合、上品を示す印は第一・二指を捻り、中品のものは第一・三指を、下品については第一・四指をそれぞれ捻るという違いがある。この印相の相違は、平安時代末期に心覚(一一一七—一一八一?)によって編まれた『別尊雑記』や元禄三年(一六九〇)に画工・紀秀信によって開版された『仏像図彙』にうかがえるものの、現存する九体阿弥陀像の古例には見られない。この点から古くは、印相を違えて阿弥陀像を造立するという意識はなく、印相における形式の相違も重視されていなかったとの見方もある。前記史料に図示された印相とは名称と像容とが一致しないものの、九品印を示す阿弥陀像として、延宝六年(一六七八)に造立されたと伝える東京都浄真寺九品阿弥陀如来坐像(都有形文化財)がある。
【参考】光森正士「阿弥陀仏の印相図解」(奈良国立博物館編『阿弥陀仏彫像』東京美術、一九七五)、久野健『江戸仏像図典』(東京堂出版、一九九四)
【執筆者:藤田直信】