あじかん/阿字観
真言密教における瞑想法。梵字(悉曇文字)の阿([悉曇:a])字は単なる文字ではなく真実の自己であり、かつまた大日如来の法身そのものであって、行者は蓮華の上に阿字を載せ月輪の中に収めた図柄、あるいは月輪の中に収めた阿字を蓮華に載せた図柄を手がかりにするなどして胸中に阿字を想い描き、「自身阿字と成る。阿字即ち自心也。是の如く心境不二なり」(実慧『阿字観用心口決』正蔵七七・四一五上)といった境地を体得すると即身成仏が実現されるという。法然は『往生大要抄』において、末代の行者の機根に照らして「その証得るに極めて難し」(聖典四・三〇二/昭法全四九)と論じている。
【参照項目】➡阿字、阿字本不生、大日如来
【執筆者:袖山榮輝】