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諸方答書

提供: 新纂浄土宗大辞典

しょほうとうしょ/諸方答書

法然平基親消息。本書は『漢語灯録』一〇所収だが、恵空本『漢語灯録』(古本『漢語灯録』)では、「諸方返報」と題されている。本項目の題名は、義山版『漢語灯録』による。恵空本では、「遣兵部卿基親之返報付基親状」と題されるように、法然のものとされるものと基親のものとされる消息三通が収められている。これらは、他に『西方指南抄』下本や『四十八巻伝』二九にも収載されている。『漢語灯録』では、まず法然消息があり、ついで基親の消息二通が収められている。『西方指南抄』『四十八巻伝』では、それぞれその順が異なっている。恵空本『漢語灯録』所収には、それら消息二通に日付があり(恵空本のみ日付が記されている)、その日付と内容から察するに、少なくとも恵空本『漢語灯録』の編者の意図は、まず基親が二篇の消息法然に送り、その返書が一番目に収載される法然消息ということのようで、『四十八巻伝』も同様の意図のようである。内容は、第一番目の法然消息では、基親の信心は、法然自身のものと変わらないと断じ、念仏を多く称えることは無益であるとの見解を厳しく非難している。第二番目の基親の消息は、基親を批判する人(一念義の人)が、念仏者ならば女犯もはばかることはないと述べるが、基親はこの考えに反発し、法然に意見を請うている。第三番目の基親の消息は、基親が自身の信心のありさまを示し、基親と批判者との問答が示される。なお、この基親と問答した批判者は、恵空本『漢語灯録』や『四十八巻伝』では、幸西であると指摘している。


【所収】昭法全


【参照項目】➡基親卿に遣わす御返事


【執筆者:角野玄樹】


法然空阿弥陀仏に送ったとされる消息。成立年次は不詳だが、三月一〇日の日付がある。内容は、まず相手の病を気遣う文があり、そして、出離生死するには往生浄土以上のものはなく、往生の業の中では称名念仏以上のものはないと説く。その称名念仏は、阿弥陀仏本願の行であり、善導往生礼讃』の第十八願文釈をあげる。本願に誤りはなく、必ず救いがあり、別の観行をしなくてよいと説き、『往生要集』の文を引く。また、平生の時、称名念仏功徳を積んでいれば、たとえ臨終に称名念仏ができなくても、往生はできるとして、『群疑論』をその証拠として指摘する。最後に、詳細については「此御房」に言伝ことづてている、と述べる。恵空本『漢語灯録』(古本『漢語灯録』)所収の本消息の註記には、「指南抄云、遣空阿弥陀仏」と、『指南抄』なる文献を指摘するが、いかなる文献かは不明(『西方指南抄』には本消息を収録していない)。また、『四十八巻伝』四八に本消息の文を収載しているが、同伝記では、この消息四天王寺に安置されていると記している。さらに、『翼賛』四八(浄全一六・六九一下)には、法然の本消息真筆を所蔵する者がおり、それを義山が見たとの指摘もされている。


【所収】昭法全


【執筆者:角野玄樹】