観無量寿仏経疏妙宗鈔
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんむりょうじゅぶつきょうしょみょうしゅうしょう/観無量寿仏経疏妙宗鈔
六巻。『妙宗鈔』『観経疏妙宗鈔』『観経妙宗鈔』ともいう。宋・知礼撰。天禧五年(一〇二一)成立。智顗『観経疏』の注釈書。『仏祖統紀』二五「山家教典志」(正蔵四九・二五九下)には、本書は知礼の師である宝雲義通の『観経疏記』(佚書)の説を承けたものとされる。序に、従来の『観経』の注釈は、いずれも事相を説くのみで、観法の説明を欠如するので、修心の妙観を用いて注釈を加え、天台『観経疏』が主張する「観心観仏」の趣旨を継承することを撰述の目的とすると記されている。本書には、天台浄土教学に関わる新説が多い。例えば、念仏の本意を「即心念仏」、『観経』の宗旨を「約心観仏」と定義し、天台円教の立場に立ち、道綽や善導の諸師がとなえる「称名念仏」の義と対決した。また、仏身の解釈をめぐり、「一念三千」や「十界互具」に基づき「蛣蜣六即」を提唱し、天台山外派と称された諸師と論争を繰り返した。そして、仏土の解釈について、天台の「相即」義に従い、「寂光有相」の新説をもとなえた。本書に取り上げられた「観心観仏」問題は、後に江戸時代において再び激しく論じられ、天台宗の光謙と性慶、その門人たちにより、多数の論著(続浄一四収録)が作られた。
【所収】浄全五、正蔵三七
【参考】安藤俊雄『天台学論集—止観と浄土』(平楽寺書店、一九七五)、林鳴宇『宋代天台教学の研究』(山喜房仏書林、二〇〇三)
【執筆者:林鳴宇】