精霊回向文
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうれいえこうもん/精霊回向文
精霊を回向するために唱える偈文。「今日現前諸衆等誦経 念仏業衆善回向(戒名)霊位証得無生果」(『諸回向宝鑑』二・一一オ)。「本日現に仏前にいる大衆は、誦経念仏行の多くの善をもって回向する。(戒名)霊位、無生の果を証得せんことを願う」の意。同書の同項目には、この他に「聞名得益偈」「降魔偈」などの八つの偈文を掲載している。「若人造多罪 応堕地獄中 纔聞弥陀名 猛火為清涼」(『三宝感応要略録』正蔵五一・八三二上~中)。出典は『浄土本縁経』とあるが、不詳。「若在三途 勤苦之処 見此光明 皆得休息 無復苦悩 寿終之後 皆蒙解脱」(『無量寿経』上、聖典一・四八/浄全一・一三)。『無量寿経』「光明歎徳章」に見られるこの偈文は浄土宗の追善回向の経証である。「為其男女追勝福 有大金光照地獄 光中演説深妙音 開悟父母令発意」(『心地観経』三、正蔵三・三〇二中)。『諸回向宝鑑』では「勝福」が「修福」、「深妙音」が「微妙法」となっている。「若有臨終及死堕地獄 家内眷属為其亡者 念仏及転誦斎福亡者 則出地獄往生極楽」(『安楽集』下、浄全一・七〇〇上/正蔵四七・一七上)。『諸回向宝鑑』では「若有臨終及」が「若有及臨終」となっている。出典は『随願往生経』とあるが不詳。「我説彼尊功徳事 衆善無辺如海水 所獲善根清浄者 廻施衆生生彼国」(『往生礼讃』中夜礼讃、浄全四・三六四上/正蔵四七・四四二下)。このように追善法要で用いられていた回向文は多いが、現在用いられているのは「聞名得益偈」「降魔偈」「一切精霊偈」などである。
【執筆者:福西賢雄】