祭文
提供: 新纂浄土宗大辞典
さいもん/祭文
仏教、神道、儒教等において祭祀の際に奏上する祈願の文。独得の節を付けて読む声明曲の一つで、古代は厳粛であったが、平安時代になると、山伏によって伝えられ、中世には娯楽的要素を加えた「もじり祭文」となり、神事や仏事が俗化し、その流れとともに芸能化したものとなった。江戸元禄期には上方において、世俗の恋愛心中物、追善物、巷間の話題をとり上げ、一種の「くどき」としたものが歌祭文である。これらが地方で盆踊歌となったのが祭文踊、祭文音頭で、瞽女歌を松坂祭文という。後期には貝祭文(デロレン祭文)が誕生し、説経祭文、世話物浄瑠璃に大きな影響を与え、明治に入って浪花節、江州音頭と寄席芸となった。宗教・生活・娯楽を一体としている前近代構造の中で祭文は教化(唱導)としての祭文と、芸能としての祭文との区別がしにくくなるが、これは極めて自然な成り行きであった。『諸回向宝鑑』一には、「盆供祭文」として現行の盂蘭盆会の表白が掲載され、『浄土苾蒭宝庫』上には、施餓鬼法に祭文(現行の宣疏)が掲載されている。
【執筆者:加藤善也】