白蓮宗
提供: 新纂浄土宗大辞典
びゃくれんしゅう/白蓮宗
一二世紀におこった庶民中心の念仏信仰の団体。南宋初期に子元が澱山湖(江蘇省清浦県西方)に白蓮懺堂を創建して民衆を集め、廬山慧遠の念仏宗の復興と称する白蓮宗の運動をおこした。その宗徒を白蓮宗と呼ぶ。子元は『円融四土三観選仏図』等、数部(欠)を著述して自己の浄土教義を説いた。その教義は凡聖土・方便土・実報土・常寂光土の浄土論を機根論と結びつけ、往生の行業として信・願・業の具足を必須とし、唯心説を基調とするなど、従来の浄土教説の影響を受けるものであるが、五戒の厳守を力説し、一戒を念じて念仏一声して、すなわち五声に至る、という五声念仏などの新説も唱えた。教義面では異端邪説ではないが、宗徒の中に、念仏会の際に夜中に集い暁に解散する習慣があり、それが男女間の風紀上、また治安の面で問題視され、旧仏教界や政府から異端邪説とされて禁圧を受けた。ほどなく禁圧は解かれ宗風を宣揚したが、その後、宗徒の一部が世間から邪教として批判される行動をとり、再び禁圧された。元代には普度が白蓮宗の弊害を是正し復興。その意趣を『廬山蓮宗宝鑑』一〇巻、『廬山復教集』二巻に詳説する。普度により復興した白蓮宗は廬山を中心に正宗として存続し、明代になると白蓮宗といわず蓮宗と称することが多くなった。
【参考】望月信亨『中国浄土教理史』(法蔵館、一九六四)、小笠原宣秀『中国近世浄土教史の研究』(百華苑、一九六三)
【参照項目】➡子元
【執筆者:佐藤成順】