ぐめいほっしんしゅう/愚迷発心集
一巻。貞慶撰。『道心祈請表白』『無常詞』を原材料として、興福寺から笠置山への遁世(建久四年〔一一九三〕)の後に成立。一切の仏神に対し菩提心がおこるように、真摯に祈願する内容が美文で綴られている。本書で貞慶が当時の末法思想の影響下に罪業観を吐露する点は、法然らの浄土教にも類似するが、仏神の加護を得て修行を積み重ねて往生・成仏を期する点は法然と異なり自力の立場である。発心と修行を強調した明恵とは、法然を批判した点でも共通する。
【所収】『日本思想大系』一五、高瀬承厳校註『解脱上人愚迷発心集』(岩波書店、一九三四)
【参照項目】➡貞慶
【執筆者:舩田淳一】