延年転寿
提供: 新纂浄土宗大辞典
えんねんてんじゅ/延年転寿
自らの修行、あるいは仏の力によって元来の寿命を延ばすこと。『選択集』一五では「三昧の道場に入るを除いて、日別に弥陀仏を念ずること一万して、畢命相続する者は、すなわち弥陀の加念を蒙り、罪障を除くことを得。また仏と聖衆と、常に来って護念したまうことを蒙る。すでに護念を蒙れば、すなわち延年転寿を得」(聖典三・一八二/昭法全三四六)と、善導の『観念法門』の現生護念増上縁の文を引き、念仏の利益としてこれを示している。また『浄土宗略抄』では「しかればかくのごときの諸仏諸神、囲繞して護りたまわん上は、またいずれの仏神かありて悩まし礙ぐる事あらん。また宿業限りありて受くべからん病はいかなる諸の仏神に祈るともそれによるまじき事なり。祈によりて病も息み命も延ぶる事あらば、誰かは一人として病み死ぬる人あらん」(聖典四・三六七/昭法全六〇四〜五)として、念仏の延年転寿の利益を認めた上で、なおかつ病み、死んでゆく人間の宿業の深さを語っている。良忠の『決疑鈔』五では、延年転寿はあくまで念仏の一利益にとどまるものであり、西方の行者が望むべき心得ではないことを説いている(浄全七・三三九下)。
【参照項目】➡延命地蔵
【執筆者:藤本淨彦】