広布薩
提供: 新纂浄土宗大辞典
こうふさつ/広布薩
一
受戒し仏弟子となった人々が毎月一五日と三〇日に定められた場所に集まり、説戒師が読み上げる戒を聞いて自己の罪過を反省し懺悔する定期集会が布薩であり、年に一度開かれる布薩を広布薩(大布薩)と言う。京都の修行道場であった鹿ヶ谷法然院(現・浄土系単立寺院)で毎年九月一〇日(起源は定かではない)に厳修されていたが、昭和四〇年(一九六五)以降二十数年に亘って途絶えていた。平成三年(一九九一)に浄土宗総合研究所(西部法式研究部・当時)が再興し、時間の短縮化と音声部威儀部を解りやすくするために法則本を作成した。その後毎年、法然院広布薩保存会会員により継承されている。
【参考】八尾敬俊「法然院広布薩法則本について」(『教化研究』三、一九九二)
【参照項目】➡布薩
【執筆者:八尾敬俊】
二
青森県弘前市の貞昌寺で開山忌法要として行われている。毎月二回行う半月布薩に対し、年に一度行う大乗菩薩戒による布薩会。起源は明確ではないが広布薩を準用した法要。小者は左右一名ずつで説戒文の一部が省略され、威儀師という高位の役僧が置かれるなど、省略と改変がある。末尾部分も若干略されて、併修の御忌会や施餓鬼会などに移行するため色衣を着用している。また梵唄と十二光仏などは名越流の声明が唱えられている。布薩は各自の罪過を懺悔し、善法を増長することを念ずる法要儀式であり、この本来の意義とはやや異なる。
【資料】『貞昌寺 開山忌差定』(貞昌寺・発行年不詳)
【執筆者:遠藤聡明】