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仮名法語

提供: 新纂浄土宗大辞典

かなほうご/仮名法語

祖師高僧の教えを仮名文でわかりやすく説いたもの。法語とは、広義には仏法を言葉として伝えるものをいうが、とくに在家信者へ向けて平易に説かれ、仮名文の形で記されたものを仮名法語と呼ぶ。はじめ、唐宋時代の中国では、韻文、偈頌によって仏法を説くものを法語といい、やがて散文としても説かれるようになり、これが日本における仮名法語へと繫がってゆくとされている。仮名法語は、比喩や方便を用いて仏の教えを易しく説き、理解しやすいように和文という文体を採用するものであり、教義の難解な表現を読み解くことができない状態にある人々に対して、仏法を伝えてゆこうとする布教活動の実践の在り方と意義を認めることができる。ゆえに、日本における仏教の展開において、教義を説いて救いへの道を広めようとする仏教者の活動と、その教えを受容する人々の関係を考える上で重要な資料といえよう。平安時代の浄土教の隆盛に伴って行われるようになり、源信の作と伝える『横川よかわ法語』が最も古いものであるとされる。鎌倉時代になると、いわゆる新仏教祖師たちによる庶民階層への布教において活発に用いられ流通した。鎌倉期のものとしては、法然の『一枚起請文』や信瑞の『広疑瑞決集』、浄土真宗では親鸞の思想を唯円がまとめた『歎異抄』などがあり、禅宗では道元の教えを懐奘えじょうが筆録した『正法眼蔵随聞記』がある。また鎌倉末期頃には、法然をはじめとして、その影響下にあった念仏者の言葉を集めた仮名法語集である『一言芳談』が成立している。中世以降、浄土宗浄土真宗臨済宗曹洞宗日蓮宗などに多く見ることができ、その形式は、問答説法・書簡・聞書きなど様々である。唱導説教に際して利用されることもあったといわれる。


【参考】宮坂宥勝校注『仮名法語集』(岩波書店、一九六四)、坂東性純編『仮名法語』(中央公論社、一九九一)


【参照項目】➡和語灯録黒谷上人語灯録


【執筆者:池見澄隆】