中陰回向
提供: 新纂浄土宗大辞典
ちゅういんえこう/中陰回向
初七日から七七日までの供養をいう。一般には『瑜伽論』一などの「中有は若し未だ生縁を得ざれば極めて七日住す。生縁を得ること有るも即ち決定せず。若し極めて七日にして未だ生縁を得ざれば死して復た生じ、極めて七日住す。是の如く展転して未だ生縁を得ず、乃至七七日住す。此れ自り已後は決して生縁を得」(正蔵三〇・二八二上)とする七七日満中陰説によって行う。天台・真言・禅などの各宗派では、中国や日本で撰述されたとされる『預修十王生七経』『地蔵十王経』(続蔵一)などに説かれる十王信仰や、室町時代以降に日本で成立したといわれる十三仏信仰により、七日毎に異なる本尊を配して、死者の冥福を祈る中陰法要を勤める。七本塔婆や十三仏塔婆を立てて供養する地方が多く、葬儀式後に初三日を行うこともある。『持宝通覧』中には「今、世上に中陰の七日毎に法事を為ることは、其の功力を以てたとひ悪趣に生ずべき者も転じて善趣に生ず故に、七七日の内は亡者念念骨肉眷属の救を望むと地蔵本願経に説けり。然れば中陰の間は専ら追善を修すべき也…中陰の追福は、亡者中有に在て罪福未だ定まらず、追薦の功を以て生有を扶けて善処に到らしめんがため也」(三九ウ~四〇オ)と『地蔵本願経』(正蔵一三・七八四中)を引いて中陰回向の重要性を説いている。しかし阿弥陀仏の本願による即得往生を願う浄土宗では、七七日を経て次の生縁が定まるとする中陰説による追善供養ではなく、極楽往生した亡き人の仏果を増進し、速やかに菩提に到ることを願って中陰回向を勤める。
【執筆者:熊井康雄】