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一切精霊偈

提供: 新纂浄土宗大辞典

いっさいしょうれいげ/一切精霊偈

今は亡きすべての精霊往生を念じる回向文。「一切精霊極楽いっさいしょうれいしょうごくらく 上品蓮台正覚じょうぼんれんだいじょうしょうがく 菩提行願不退転ぼだいぎょうがんふたいてん 引導三有及法界いんどうさんぬぎゅうほうかい」。亡き人すべてが極楽往生し、この上なき蓮の台で覚りを得て、この往生人菩提の行と誓願を退転することなく、すべてのものを導き給う、との意。上二句は往相回向を、下二句は還相回向を示している。出典は、上二句は『大毘盧遮那経』(『大日経』)、下二句は『大般若経』「理趣分」とされているが、詳細は不明。『新撰往生伝』には、鎌倉光明寺九世観誉祐崇が、この偈を制定したと伝えている。正元元年(一二五九)銘の定阿弥陀仏が造立した「長泉院墓地種子板碑」(出土地・上小堀かみこぼり長泉院墓地)には、釈尊種子と「弥陀観音大勢至 安楽界中諸聖衆 為我往生増上縁 一切自来常護念 聖霊決定生極楽 上品蓮台正覚 菩提行願不退転 引導三有及法界」と刻まれていて、既に鎌倉時代中期には同様の回向文があった。また、現行の『例時作法』と鎌倉光明寺と芝増上寺の『引声阿弥陀経』の回向文では、「本願聖霊生極楽上品蓮台仏道」(下二句は同文)と唱えている。『法要集』には、修正会晋山式墓回向棚経にこの回向文を用いるとしている。一般的には、多くの精霊回向する場合に用いている。「一切」を「新亡」や「現前」などに替えたり、「一切」を省略して用いることもある。


【資料】『新撰往生伝』一(浄全一七・五一三上)、「長泉院下総式板碑」(千葉県有形文化財、香取市文化財保存館収蔵)


【参考】『浄土宗日常勤行式の総合的研究』(浄土宗総合研究所、一九九九)、川勝政太郎「下総の正元板碑と造立背景」(『史迹と美術』四七—一、一九七七)


【執筆者:西城宗隆】