話芸
提供: 新纂浄土宗大辞典
わげい/話芸
落語や講談のように長い歴史と伝統の中で培われ、鍛えられ、練りあげられた「はなし」の芸をさす。関山和夫は「話芸」の語を昭和二八年(一九五三)秋から用いており、同著『説教と話芸』(青蛙房、一九六四)が書物の題名に「話芸」が使われた最初である。話芸の源流は、説話(昔話)・咄職(古代の語部や中世の御伽衆など)に求められるが、最も重要なものは、仏教伝来以後、多種多様な形で進展した説教(唱導)の伝承である。特に中世の安居院流と三井寺派の演説体説教は、芸能的な節付けで人気があり、『元亨釈書』二九「音芸志」に「変態百出・俳優の伎」(仏全一〇一・四八八上~下)と評されている。この二派は中世における全国の弁舌家のモデルとなった。安居院流は、天台宗から浄土宗に入り、真宗で大発展をとげて、近世後期に節談説教を生んだ。また、落語の祖は安楽庵策伝、講談の祖は赤松法印とされており、話芸は説教から派生したものといえる。話芸は、長い歴史の中で幾度も口演されて芸としての型を創造した。話芸は話術とは違い、いかに話術に巧みでも話芸ではない。人間の社会生活に密着し、笑わせたり感動させたりしながら、しみじみと聴かせる技術を話芸という。さまざまな演出をこらし、創意と工夫を加えて、何度も口演して型を作り、師匠から弟子に伝えるところに話芸の特色がある。広義には「語りもの」も話芸であり、説経節や浪曲はその部類であるが、漫談や漫才は話芸ではない。また、「談」「話」「語」が同義であることは、橘忠兼著『色葉字類抄』によって明白である。
【参考】関山和夫『説教の歴史的研究』(法蔵館、一九七三)、同『話芸の系譜』(創元社、一九七三)、同『説教の歴史』(白水社、一九九二)
【執筆者:関山和夫】