紫雲
提供: 新纂浄土宗大辞典
しうん/紫雲
奇瑞・祥瑞にあらわれる紫色の雲のこと。例えば、迦才の『浄土論』下の道綽の伝記には、道綽滅後に「また紫雲あり、三度陵上において現ず」(浄全六・六五九下)とあり、奇瑞としての紫雲が説かれている。日本では平安時代に編纂された諸種の往生伝に、臨終時の聖衆来迎などに際して、紫雲や五色の雲がたなびく模様が多く記され、当時の人々はそのような奇瑞を往生の証拠としていた。法然の伝記には、誕生や善導との夢中会見、法然の信奉者の往生などに紫雲があったと伝えられ、晩年、往生が近づいたときには、紫雲が住居の空を覆ったとし、『九巻伝』七下には「此瑞相は御往生の近づき給へるなるべしと人びと申けるを上人聞き給ひて曰。紫雲は衆生の信をまさんため也」(浄全一七・二一〇下/法伝全四三八上)とある。また、法然の歌に「柴の戸に明け暮れ懸かる白雲を 何時紫の色に見做さむ」(聖典六・四八二)がある。
【資料】『日本往生極楽記』、『続本朝往生伝』、『拾遺往生伝』、『後拾遺往生伝』、『三外往生記』、『本朝新修往生伝』、『和語灯録』、『四十八巻伝』
【参照項目】➡奇瑞
【執筆者:今井英之】