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J2410 九巻伝 〓 画像

続浄の割書は、青字で小さく表示。

巻_頁段行 本文
J17_0210A01: ふ。又信空上人云。古來の先德皆遺跡あり。而に今
J17_0210A02: 一宇建立の精舍なし。御入滅の後何の所をもてか御
J17_0210A03: 遺跡とすべきやと。上人答て曰く。遺跡は一廟を卜
J17_0210A04: れば遺法周ねからず。予が遺跡は諸州にあるべし。
J17_0210A05: 其故は念佛三昧の興行は愚老一期の勸化也。賤男賤
J17_0210A06: 女の柴の戸細。海人漁人の葦の笘屋に至るまで。念
J17_0210A07: 佛を修せん砌は。皆我遺跡なるべしとぞ仰られけ
J17_0210A08: り。
J17_0210A09: 高聲念佛事
J17_0210A10: 同十一日辰の尅に上人起居たまひて。西に向ひて高
J17_0210A11: 聲に念佛し給ふに。聞人皆涙を流す。門弟等に告て
J17_0210A12: 曰。高聲に念佛すべし。此名號を唱るもの。一人も
J17_0210A13: むなしからず皆往生すべき也と。高聲念佛をすすめ
J17_0210A14: て。念佛の功德を種じゅに讚談し給ひ。觀音勢至等
J17_0210A15: の菩薩聖衆現前し給へり。各おの拜し奉らずやと仰
J17_0210A16: られけるに。弟子等拜せざるよしを申せば。いよい
J17_0210A17: よ念佛を勸め給ふ。其後臨終佛のために。三尺の阿
J17_0210B18: 彌陀の像を病床の砌に迎奉りて。此佛を拜し給へと
J17_0210B19: 申時。上人指をもて空をさして曰。此佛の外に又佛
J17_0210B20: まします。拜むやいなや。凡十餘年より已來。念佛
J17_0210B21: の功積て。極樂の莊嚴および佛菩薩の眞身を拜する
J17_0210B22: 事常の事也。然るに年來は祕していはず。今最後に
J17_0210B23: 臨めるゆへに示す也。又佛の御手に五色の糸を付て
J17_0210B24: とり給ふべきよし申時。上人曰。如斯の事は大樣
J17_0210B25: の事也。但衆生のためには取べし。
J17_0210B26: 紫雲坊の上に垂布事
J17_0210B27: 同廿日巳の時。紫雲坊の上に垂布せり。中に圓形の
J17_0210B28: 雲あり。圖繪の形像の圓光のごとくにして。五色鮮
J17_0210B29: 潔也。路次往返の人。所どころにして是を見る。此瑞
J17_0210B30: 相は御往生の近づき給へるなるべしと人びと申ける
J17_0210B31: を上人聞給ひて曰。紫雲は衆生の信をまさんため
J17_0210B32: 也。命終に只今にあらず。善哉善哉。我往生は唯一
J17_0210B33: 切衆生をして。念佛を信ぜしめ。極樂に引接せんが
J17_0210B34: 爲と。未の時にいたりて目を開て。西方を見送り給

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