浄土宗略抄
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょうどしゅうりゃくしょう/浄土宗略抄
『昭法全』では、「鎌倉二位の禅尼へ進ぜられし書」とも呼称している。法然が記したと伝えられる文献。『和語灯録』二に収録。『和語灯録』所収本末尾の註記には、「本にいわく、この書は鎌倉の二位の禅尼の請によて、記し進ぜらるる書也云云」(聖典四・三六八/昭法全六〇五)とあり、本書が鎌倉二位の禅尼、すなわち北条政子に宛てたものとしている。内容は、聖浄二門、安心、起行、念仏の利益が説かれている。まず、聖浄二門ではその解説がなされ、聖浄二門は難易二道でもあると説かれる。また、本願の由来や第十八願文の解釈が展開される。安心では、三心の解説がなされている。善導の文を引用し、私釈を加えていく形式をとっている。起行では、正雑二行論が述べられ、十即十生の文や、十三失の文を簡略化して解説し、念仏を勧めている。また、『法華経』などを読誦する諸行を、念仏に加えることのないように論じている。念仏の利益では、念仏により、仏・菩薩の護念があるとし、悪鬼・悪神を払い除く、とする。本書は、『往生大要抄』や『御消息』と対応する文が多いことも特徴的な点である。
【所収】昭法全、浄全九、正蔵八三
【執筆者:角野玄樹】