往生礼讃私記
提供: 新纂浄土宗大辞典
おうじょうらいさんしき/往生礼讃私記
一
二巻。著者は良忠であるが、浄全本(宝永六年〔一七〇九〕版が底本〕には「釈良忠述、釈良仰校正」とある。成立年次は不詳であるが、『法事讃私記』や『般舟讃私記』よりも先に成立したものと考えられる。善導の『往生礼讃』の注釈書であり、巻上では①「顕瑞」において少康が体験した奇瑞と『往生礼讃』の入蔵の経緯について簡略に述べ、②「釈名」で題号の注釈と中有に関する議論を挙げ、③「分文」で問答を交えながら前序から初夜礼讃まで逐文解釈を進めている。巻下では中夜礼讃から後序までを注釈している。本書の大きな特色は詳細な出典考証と諸本の校合にある。例えば無常偈について個々の出典を精査したうえでの指摘は本書が初出。また諸本との校合は良忠自らが法成寺経蔵本との校訂の結果を明示している点(浄全四・三九一上)などが挙げられる。本書は浄土宗における『往生礼讃』解釈の基本的な内容を記した極めて重要な一書である。
【所収】浄全四
【参照項目】➡往生礼讃
【執筆者:柴田泰山】
二
三巻。『往生礼讃秘鈔』ともいう。行観述。永仁六年(一二九八)から記し始める。西山派西谷義の相伝を伝え、他の法然門下の異義をただすために書かれた『往生礼讃』の註釈書。西山流四祖、禅林寺二〇世として有名な行観は『選択集』と五部九巻すべてに註釈書を残しており、それが秘鈔三五巻として伝わっている。その中の行儀分の註釈書を集めた『具疏秘鈔』一〇巻に本書が含まれる。宝永二年(一七〇五)写本が大谷大、宝暦一二年(一七六二)版本が西山短大に所蔵される。
【参考】『選択集秘鈔』凡例(浄全八)、西全別四解説
【参照項目】➡往生礼讃
【執筆者:石上壽應】