大乗起信論
提供: 新纂浄土宗大辞典
だいじょうきしんろん/大乗起信論
『起信論』ともいう。伝馬鳴作。成立年不明。大乗仏教の数少ない綱要書の一つ。一心・二門・三大・四信・五行の体系的な構成により、唯識・如来蔵・中観思想を統合的に示している。衆生心の一心に、真如門と生滅門とがあり、生滅門においては、心に体大・相大・用大の三大が説かれる。真如および三宝への四信の確立により不退の位ないし正定聚に入るが、そのための修行に、布施・持戒・忍辱・精進・止観(禅定と智慧)の五行があることを説く。さらに、この行に耐え得ない者のために勝方便として念仏を用意している。生滅門において本覚、真如門において依言真如と離言真如が説かれていることは有名である。なお、『大乗起信論』は、漢訳に真諦訳(一巻)と実叉難陀訳(二巻)とがあるが、サンスクリット写本はもとよりチベット訳等もない。そこで古来、インド撰か中国撰か議論があり、いまだ学界において決着したとは言えない状況にある。近年は、真諦訳も、むしろ北方の地論宗と深い関係があるのではないかと目されている。
【参照項目】➡如来蔵
【執筆者:竹村牧男】