出世間
提供: 新纂浄土宗大辞典
しゅっせけん/出世間
煩悩に覆われて苦にさいなまれ、生死輪廻を繰り返す世間を出離すること。あるいは出離した領域、世界のこと。ⓈlokottaraⓅlokuttara。もともと三界(欲界・色界・無色界)の煩悩を離れて、さとりの境地に入ること、またその境地自体である仏陀の領域を意味していたが、大乗では菩薩の修行階梯である十地の見道初地以上を出世間の領域とし、それ以前を世間の段階とした。また八地以上を「出出世間」と名づける三世間(世間・出世間・出出世間)を説くものもある。法然は『選択集』一二の中で、『観経』に説く三福の第一「孝養父母、奉事師長」に世間、出世間の別があるとし、「世間の孝養とは『孝経』等に説くがごとし。出世の孝養とは律の中の生縁奉事の法のごとし」(聖典三・一六六/昭法全三三九)、また「世間の師とは仁義礼智信等を教えるの師なり。出世の師とは、聖道浄土の二門等を教えるの師なり」(同)という。
【執筆者:吹田隆道】