三種発心
提供: 新纂浄土宗大辞典
さんしゅほっしん/三種発心
三種類の発心、すなわち信成就発心・解行発心・証発心の三種のこと。この三種発心は阿弥陀仏の因位(法蔵菩薩として修行中)の発心の解釈にも用いられる。『起信論』によると信成就発心とは、業の果報あるいは大悲を信じることによる発心であり、また護法の因縁による発心である。解行発心とは真如の法の中において深解が現前し、法性の体を知り、それに随順して六波羅蜜を修行することである。証発心とは真如を証し、衆生を利益することである。また元暁『起信論疏』によれば、信成就発心は信心が成就して決定心が起こること、解行発心は六波羅蜜の修行が熟して回向心が起こること、証発心は法身を証得して真心が起こることである。これら三種の発心は、菩薩の階位と対応して理解され信成就発心が十信・十住、解行発心が十行・十回向、証発心が初地以上とされる。良忠は『東宗要』一において、義寂の説を用いて法蔵の発心をこの三種に分類するが、これは『悲華経』と『無量寿経』との二経典に説かれる説を合わせた上で、前者を初住の発心、後者を地上の発心と理解したものである。
【執筆者:長尾隆寛】