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三福

提供: 新纂浄土宗大辞典

さんぷく/三福

西方極楽往生を願う者が修すべき三種の浄業往生正因。『観経』に説かれる。三種とは①孝養父母きょうようぶも奉事師長ぶじしちょう慈心不殺じしんふせつ・修十善業、②受持三帰具足衆戒・不犯威儀ふぼんいぎ、③発菩提心・深信因果読誦大乗・勧進行者のこと。これらは未来世一切衆生における往生正因であると同時に、三世諸仏浄業正因、すなわち成仏正因でもあるという。三福について善導は第一の福を世俗善と名付けて世福とし、第二の福を戒善と名付けて戒福とし、第三の福を行善と名付けて行福とした。このうち世福とは世俗の善根のことで、仏法にはまだ出会っていないが、孝養に努め仁・義・礼・智・信といった徳目を行ずることをいう。戒福とは戒に人天声聞菩薩と種別があり、それぞれにまた具受・不具受の別があるが、いずれにしろ戒の実践をいう。行福とは大乗の心をおこした凡夫が自らよく修行し、さらに有縁の人にも奨励し、また悪しきことを捨てて心をたもつことをいう。いずれも回向すれば往生がかなうとされる。法然は世福のうち上二句には世間と出世の別があるとし、また慈心不殺についてこれを慈悲喜捨四無量心を含んだ語であるとも、またこれは不殺生のことであるから下二句は結局十善を指すとも考えられるとした。戒福については三句ともそれぞれ大乗・小乗のものがあるとし、行福の発菩提心についてはいかなる仏教に基づく菩提心であれ、それぞれに発すこととした。また深信因果についても因果世間出家の別があるとし、前者は輪廻生死する六道因果、後者はいかなる仏教であれ覚りに至る因果のこととした。さらに読誦大乗の読誦とは転読・諷誦あるいは披読・諷誦のことで五種法師あるいは十種法行を含んだ語であるとし、大乗とは一切の諸大乗経を指すとした。また勧進行者とは定散の諸善および念仏三昧を奨励することとした。なお行福のうち上三句は自利、下一句は利他の行と解されている。ちなみに「三福九品は是れ開合の異」(浄全七・三一六下)といって、九品往生のそれぞれの正因として三福があると理解されている。


【資料】『観経疏』散善義、『選択集』一二、義山『観経随聞講録』下


【参考】石井教道『選択集全講』(平楽寺書店、一九五九)


【執筆者:袖山榮輝】