一乗
提供: 新纂浄土宗大辞典
いちじょう/一乗
一つの乗り物のこと。一仏乗ともいう。ⓈekayānaⓉtheg pa gcig paの訳。乗とは、教えを覚りへ向かわせる乗り物に譬えたもの。仏の真実の教えは一つであり、すべての衆生が平等に仏になれると説く教え。これに対して、声聞・縁覚・菩薩のそれぞれに、固有な三種の覚りへの道があるとするのが三乗である。天台宗や華厳宗では一乗が真実であり三乗は方便であると主張したのに対し、法相宗では、五姓各別の教えに基づき、三乗真実・一乗方便であると主張した。また一乗と、三乗中の菩薩乗が同一か否かという点でも見解が分かれる。『無量寿経』下に「一乗を究竟して、彼岸に至る」(聖典一・二五八/浄全一・二三)と説かれるが、梵本によれば「さとりがたい仏の智に入って傑出し」とあるから、この一乗は、憬興が『無量寿経連義述文賛』下に「一乗は即ち智なり」(浄全五・一五二上/正蔵三七・一六二中)と述べるように、極楽にいる諸菩薩は一仏乗の智慧を極めていると理解すべきである。浄土教は一乗か三乗かということについては、善導が『観経疏』玄義分に、「我れ、菩薩蔵、頓教一乗海に依って、偈を説いて、三宝に帰して、仏心と相応せん」(聖典二・一六〇/浄全二・一上~下)として、浄土の教えを一乗教としている。
【執筆者:曽和義宏】