光岳寺
提供: 新纂浄土宗大辞典
こうがくじ／光岳寺
一
東京都調布市富士見町。渓照山西向院。東京教区№四三四。徳川家康の生母於大の方を祀る。伝通院四世聞悦が、於大の方の荼毘所跡に、その法名伝通院殿蓉誉光岳智香大禅定尼から光岳寺と智香寺の二箇寺を正保元年（一六四四）に建立（寛永一五年説もある）。廓吞を光岳寺の開山とする。廓吞は後に尾張建中寺も開く。昭和九年（一九三四）飛田給に移転、さらに同一九年現在地に移る。境内には太田道灌稲荷を祀り、江戸時代の俳人大島蓼太の句碑もある。
【資料】『浄土宗寺院由緒書』中（『増上寺史料集』六）
【参考】『調布市百年史』（調布市、一九六八）
【執筆者：野村恒道】
二
長野県小諸市荒町。天機山伝通院。長野教区№一四五。小諸城址懐古園にほど近い、小諸藩主松平家ゆかりの寺。小諸藩主仙石家が上田藩に転封の際、ともに遷された仙石家菩提寺芳泉寺の跡地に、寛永元年（一六二四）、松平忠憲（憲良）の入封とともに美濃国大垣から遷された。開基は忠憲、開山は玄誉天機。忠憲の祖が徳川家康の生母、於大の方（伝通院）を室としていることから、家康と伝通院の供養のために建立。明治維新後、山門として小諸城の足柄門が移築されている。
【資料】『蓮門精舎旧詞』二六
【参考】『長野県史 通史編四 近世一』（長野県、一九八七）、『信州の仏教寺院』二（郷土出版社、一九八六）
【執筆者：袖山榮輝】
三
三重県桑名市長島町。天機山伝通院。伊勢教区№四。もとは下総国関宿にある弘経寺という寺院であった。徳川家康の異父同母弟久松俊勝の子、松平康元が家康と祖母伝通院の菩提所として飯沼弘経寺九世天機善慶を開山に仰ぎ再興。このとき、天機と伝通院の戒名に因み改称する。松平家転封に伴い当寺も美濃・信濃と移転を重ね、慶安二年（一六四九）松平良尚により当地に移り現在に至る。享保九年（一七二四）関通が当山一七世となり再興。関通の墓ならびに伝通院の念持仏であった沓履子安地蔵尊（最澄一刀三礼の作と伝える）が著名である。
【資料】『蓮門精舎旧詞』一四（続浄一八）、伊藤重信『長島町誌』上（長島町教育委員会、一九七八）
【執筆者：朝岡知宏】