感誉流伝法
提供: 新纂浄土宗大辞典
かんよりゅうでんぼう/感誉流伝法
感誉存貞の案出した箇条伝法のこと。存貞は、道誉貞把と共に伝法史上に大きな足跡を残した。道・感二師による伝法改革は、一箇寺の住職となるために短期間で養成される浅学衆のための略式の伝法を主眼としており、従来二七日の加行中に五重の全てを相伝していたものを二つに分け、五重(短期間で養成される浅学衆のための相伝、浅学相承、五重自証門伝)と宗脈(五重を受けて後、一定の修学期間を経た碩学衆が授かる相伝、碩学相承、宗脈化他門伝)との二度に渡る式に改めたところにその特徴を持つ。存貞の五重九箇条は、触香伝、座具伝、五重自証門伝、授手印伝、五通五箇伝、面上伝、三種病人伝、未回心声聞伝、気息之伝であり、宗脈五箇条は、宗脈以上化他門之伝、都部之伝、授手印之伝、総口伝、凡入報土伝であり、この他に添え口伝として、引導伝、洒水霊供伝、開眼発遣伝がある。道・感二師の伝目は、聖冏『五重指南目録』・聖聡『三国正伝口授心伝集』を基にしているが、二師独自の伝目を規定しており、初重から四重までの口伝がほとんど選取されないなど、極略式の伝法が案出されている。その一方、両師は聖冏の古式の伝法を復活させようと、大五重または総五重と称し、三年から五年に一度、『五重指南目録』通りの伝法を行った。しかし、これは次第に廃れ、箇条伝法のみが継承されていくことになる。
【参考】恵谷隆戒「近世浄土宗伝法史について」(『浄土教の新研究』山喜房仏書林、一九七六)
【執筆者:東海林良昌】