観音経
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:21時点における192.168.11.48 (トーク)による版
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かんのんぎょう/観音経
鳩摩羅什訳『法華経』「観世音菩薩普門品第二十五」ⓈSamantamukha-parivarto nāmāvalokiteśvara-vikurvaṇa-nirdeśaḥのこと。『観音経』として知られる。観世音菩薩(観音菩薩)の慈悲と大神通力による衆生の救済を説く経典。長行(散文)と偈頌(詩)からなり、偈頌は「世尊妙相具」から始まることから「世尊偈」とも呼ばれる。仏陀と無尽意菩薩の対話の形をとり、前半は、称名の功徳が説かれ、観音菩薩の名号を受持・読誦することで、火・水・羅刹・刀杖・鬼・枷鎖・怨賊難の七難、貪・瞋・痴の三毒を離れ、理想的な息子・娘を授かることができるとする。後半では、観音菩薩の神通力が賞賛され、礼拝供養の功徳と、三十三身による衆生救済、布施の意義が説かれる。散文の後に、ほぼ同じ内容の偈頌が説かれるが、ここでは称名でなく、「念」が強調される。梵本には漢訳に無い偈が七偈付加され、阿弥陀仏の成仏に関する記述がみられ、浄土教信仰との関係が指摘される。注釈書としては智顗の『観音義疏』二巻、『観音玄義』二巻がある。
【参考】吉澤秀知『全注・全訳観音経事典』(鈴木出版、二〇〇八)
【執筆者:吉澤秀知】