羅刹
提供: 新纂浄土宗大辞典
らせつ/羅刹
インドの物語にあらわれる悪魔や悪鬼のこと。Ⓢrākṣasaの音写語で羅叉などともいわれ、悪鬼などと訳される。また速疾鬼や可畏鬼と呼ばれることもある。女性の羅刹はⓈrākṣasīといい、羅刹女などと訳される。目は赤く顔は黒いとされ、また人を食べるともいわれる。あるいはまた空を飛び、地を素早く走るともいわれる。このように羅刹はおよそ人とかけ離れた怪物であり、容貌や特徴は様々に説かれている。ただし仏典に現れる羅刹は、ただ恐ろしいばかりの存在ではない。例えば『北本涅槃経』一四に説かれる雪山童子の逸話では、童子を試すために帝釈天が羅刹に変化して登場し、『法華経』陀羅尼品では、十羅刹女が法華経の行者を擁護することが述べられている。さらに羅刹天として、天の一つとなった羅刹は、西南の方角を守る天であり、仏教の守り神ともなっている。
【執筆者:石田一裕】