回向文
提供: 新纂浄土宗大辞典
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えこうもん/回向文
1自他の成仏や往生浄土のために、その趣旨が込められた文。「総回向偈」や「本誓偈」など種々ある。日常勤行式、追善法要、葬儀式をはじめ諸法要において、誦経または念仏一会の後に唱える。回向文として用いるものにはさまざまな偈文があるが、それぞれ法要の趣旨に合ったものを唱える。「総回向偈」は、誦経念仏の功徳をもって新亡・自他共に往生浄土を念じるもの、「本誓偈」は弥陀一仏、「敬礼偈」は釈尊、「広開偈」は諸仏、「自信偈」は列祖、「心浄偈」および「還相回向偈」は能化、「降魔偈」は新亡、「法楽偈」は神祇を回向するものとそれぞれ定められている。この他に、「讃仏偈」「聞名得益偈」「一切精霊偈」「祝聖文」「普済偈」「請護念偈」「灌沐偈」などがある。なお「総回向偈」のようにどの法要にも用いられるもの(通常文)と、法要の目的によって異なるもの(固有文)とがある。念仏一会の後の偈文は通常「総回向偈」であったが、『法要集』ではそれぞれの法要の趣旨に合った回向文を唱えるようになった。例えば、葬儀式では念仏一会の後に「回向文(降魔偈)」を唱えている。2総回向に対して、特定の回向対象にそれぞれ行う回向文を別回向文という。日常勤行式などの念仏一会の後に各々別々に回向する文をいう。別回向文には「寺門清寧 道縁具足 無諸障礙 浄業増長」等があり、回向文ごとに十念を称えて回向する。3諷誦文の様式で、節をつけないで唱えるもの。経前に表白的な回向文、または「総回向偈」の前に回向文として唱えている。4葬儀式や追善法要などのときに回向する文言のこと。「回向功徳文」と称することもある。「願以上来 所修善品 皆悉回向(霊名)追善増上菩提」(『平成改訂 浄土礼誦法』)など。その際、回向・回向文・十念、または回向文・回向・十念という回向法が多く行われている。また、贈五重回向などでは、回向師が和讃などをもとにした愛慟の響きをもった独自の旋律を用いて回向している。5引声阿弥陀経法要の「回向文」(呉音)。これは例時作法と同文の「我等所修念仏善 回向極楽弥陀仏」等の文を唱えている。
【参考】『法要集』(偈文の部、別回向文例)
【執筆者:西城宗隆】