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異安心

提供: 新纂浄土宗大辞典

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いあんじん/異安心

一宗派内において正統と定められた安心信仰)・教義に反して、異端信仰または異義や邪義、あるいはそれらをとなえることをいう。真宗において多く用いられる。「異安心」は、江戸時代、真宗各派の学問場(学寮、学林)において宗学が体系化され、教義解釈上の相違が多く表面化する中で、宗学の正統と定められた安心教義に反する信仰解釈に対して、従来の異解・異義・邪義等の語に加えて新たに用いられるようになった語。著名な異安心問題に本願寺派の「三業惑乱」(一七六二)や大谷派の「頓成事件」(一八四一)等がある。浄土宗においても、一宗派内での異解・異義は法然在世中より存在した。二祖聖光は『徹選択集』上に「近代、念仏の義者の中に先師の一門と号しながら、この『選択集』をなげうって、今案の私義を立てるの間、異義蘭菊いぎらんぎくにして邪徒紛紛じゃとふんぷんたり」(聖典三・二八七/浄全七・九六下〜七上)と述べ、聖聡作と伝えられる『浄土三国仏祖伝集』下には、鎮西流宗祖正伝の浄土宗とする立場から、当時数多く存在した念仏衆十五流をあげ、「伝法威儀悉く元祖作法に背く。上人在世滅後に於て専修念仏の名を借り私流義を立て名利に貪着して万民を狂惑す」(続浄一七・三三〇上〜下)と非難している。真宗に較べると、浄土宗においては異安心が問題とされることは少なかったが、慶長五年(一六〇〇)、「念仏三毒を滅せず声絶するに至らざれば益なし」とする煩悩不滅論を唱える僧侶が出たことによって、幕府から各檀林に向けた「煩悩不滅論者を止宿させぬように」との厳達を受けるという事件が起こった。その後元和元年(一六一五)に「浄土宗法度(元和条目)」が制定されたが、その中には、庶民を扇動しあるいは宗義を曲解して新奇を標榜して信徒を集める浄土宗僧侶を取り締まる条目が設けられた。


【参考】中井玄道『異安心の種々相』(真宗学研究所、一九三〇)、石田充之『異安心』(法蔵館、一九五一)、石井教道『浄土の教義と其教団』(富山房書店、一九七二)


【参照項目】➡一念義浄土十五流浄土宗法度


【執筆者:米澤実江子】