べつえこう／別回向

特定の対象に対して、善根功徳を回向すること。日常勤行式に行う別回向と、各種の法要でその趣意を表すために行う別回向がある。日常勤行式の別回向で唱える別回向文は『法要集』に文例が掲載されているが、時代や寺院の由緒などにより、必ずしも回向の定型はなく、各寺院の伝統や住職の考えに任される部分が多い。一般的には、阿弥陀仏・釈尊をはじめとする諸仏諸尊・一切三宝の回願、浄土伝灯列祖、開山開基歴代法類等の先亡諸上人、師僧父母等結縁諸人、総檀越先亡新亡精霊、三界万霊などへの回向を行うことが多い。その他には各寺院の由緒沿革などにより、天皇、戦没精霊、殉難精霊など、適宜に回向を行うが、人権の観点から、平成一三年（二〇〇一）に表白宣疏とともに、別回向の用語についても、一部修正が指示されているので留意することが必要である。阿弥陀仏・釈尊・列祖等の法要や開山忌など、『法要集』に記載されている各種法要の別回向は、その回願・回向による。阿弥陀仏・釈尊・諸仏・諸菩薩の回向には、無限の慈悲を願う意味で「広大慈恩」を用いる。列祖の回向には、浄土の伝灯を伝持された恩に酬いる意を込めて「上酬慈恩」を用いる。能化の回向には、大乗菩薩の代表的存在である普賢菩薩のごとく、行と願を速やかに完成することを願う意味で「普賢行願究竟円満」を、あるいは浄仏国土成就衆生という、菩薩行を成就することを願う意味で「荘厳浄土」を用いる。所化である助教師・宗徒の回向には、仏道修行の増進を願って「増進仏道」を用いる。在家の追善回向には、浄土における修行がますます進むことを願う「追善菩提」「増進菩提」「増上菩提」「証大菩提」などを用い、新亡精霊の場合は、浄土に往生し、念仏の功徳によって煩悩を除き、阿弥陀仏にまみえ、やがて悟りの境地に至ることを念じて「神超浄域じんちょうじょういき　業謝塵労ごうじゃじんろう　見仏聞法けんぶつもんぼう　速入無生そくにゅうむしょう」を、あるいは苦界を離れ、浄土に往生することを願って「抜苦与楽　超生浄土」を用いる。

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【参照項目】➡回向

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【執筆者：熊井康雄】