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「壬生大念仏」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

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2018年9月17日 (月) 10:09時点における版

みぶだいねんぶつ/壬生大念仏

京都壬生寺(京都市中京区壬生梛ノ宮町)で行われている大念仏会。また狂言が行われるところから壬生狂言ともいい、融通大念仏という。伝承によれば正安二年(一三〇〇)壬生寺の中興円覚十万が疫病払いの鎮花の式と融通念仏とを合わせ、仏教の教えと勧善懲悪の理を説くために始めたという。円覚は融通大念仏正行念仏)のほか、その念仏の徳を人びとにわかりやすく説明するために念仏狂言(乱行念仏)をつくったと伝えられる。もと僧俗ともに大念仏が修せられたが、次第正行念仏はすたれ、乱行念仏(狂言)が主となって現在の壬生狂言が中心となった。四月下旬から五月上旬の一週間、境内の狂言堂(大念仏堂)で上演され、台詞はなく太鼓・笛・鰐口の囃子に合わせた身振りだけの無言劇である。狂言を行う人はもと円覚の一族の末という壬生郷士によって演ぜられたが、今は講組織となり壬生大念仏講の講員によって行われている。正行念仏大念仏)は本堂で行われ、始行に当たって前日に開白願文を読み上げ、俗衆の狂言師に対する秘事伝授などがあり、夕刻から初夜勤行がある。また乱行念仏(狂言)は狂言堂で行われる。期間中は毎日初夜勤行があり、また狂言上演のはじめに、参詣人から厄除けのために奉納された炮烙ほうらく(平たい素焼の土鍋)を割る「炮烙割り」が演ぜられる。最終日には鎮花祭の古式を伝えるという「湯立ゆたて」「棒振り」で結ぶしきたりである。狂言の演目には、さきの炮烙割り・湯立・棒振りのほか、愛宕詣り・安達が原・大江山・大原女・桶取・餓鬼角力・蟹殿・熊坂・賽の河原・酒蔵金蔵・節分・大仏供養・大黒狩り・玉藻の前・土蜘蛛・道成寺・ぬえ・橋弁慶・花折・花盗人・舟弁慶・堀川御所・本能寺・紅葉狩・山端とろろ・夜討曽我・羅生門などがあり、能や狂言と同名のものが半数以上を占めている。すべて無言劇であり、それは口中に念仏を称え、手で種子を書いて法要をつとめる信仰によるとされる。国の重要無形民俗文化財に指定されている。


【参考】田中緑紅『壬生大念仏狂言』(花発行所、一九五四)、京都市産業観光局観光課編『京都郷土芸能誌』(京都市、一九五三)、『壬生寺壬生狂言関係文献目録』(壬生寺民俗資料緊急調査報告書、フジアート出版、一九七四)


【参照項目】➡大念仏念仏狂言


【執筆者:成田俊治】