「広略相入」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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こうりゃくそうにゅう/広略相入
阿弥陀仏の願心荘厳である三種二十九句荘厳成就を広、入一法句を略とし、両者が不一不異の関係(相入)にあること。入一法句は世親『往生論』に説かれるが、広略相入は曇鸞が初出。『往生論』の長行に「此の三種の成就は願心を以て荘厳せり。応に知るべし略して入一法句と説くが故に」(浄全一・一九六)といい、曇鸞は『往生論註』下「浄入願心」において「何が故ぞ広略相入を示現する。諸仏菩薩に二種の法身あり。一には法性法身、二には方便法身なり。法性法身によりて方便法身を生じ、方便法身によりて法性法身を出す。この二法身は異にしてしかも分つべからず、一にしてしかも同ずべからず。この故に広略相入して統ぶるに法の名を以てす。菩薩もし広略相入を知らざれば、則ち自利利他すること能わず」(浄全一・二五〇上~下)と解説している。曇鸞はここで広と略の相互関係が、二種法身説の法性法身と方便法身の不一不異の関係と同一であるとしている。なお広略の表現、ないし概念については、『往生論』の長行に「器世間清浄とは、向きに説くが如き十七種の荘厳仏土功徳成就なり。是を器世間清浄と名く。衆生世間清浄とは、向きに説くが如き八種荘厳仏功徳成就、四種の荘厳菩薩功徳成就となり。是を衆生世間清浄と名く。是如く一法句に二種の清浄の義を摂す」(聖典一・三六九/浄全一・一九六)とあるのに導かれたのと同時に、『大智度論』八三に「略とは諸法の一切空、無相無作、無生無滅等を知るなり。広とは諸法の種種の別相の分別なり」(正蔵二五・六三九上)とあるのに基づいたものと考えられる。曇鸞はこの広略相入の論理によって、無分別と有分別の相反する二者の関係のなかにおいて、三種二十九句荘厳成就等の相の有ることが成立することを証明している。
【参考】藤堂恭俊『無量寿経論註の研究』(仏教文化研究所、一九五八)、石川琢道『曇鸞浄土教形成論』(法蔵館、二〇〇九)
【参照項目】➡三種二十九句荘厳功徳、入一法句、二種法身
【執筆者:石川琢道】