三種二十九句荘厳功徳
提供: 新纂浄土宗大辞典
さんしゅにじゅうくくしょうごんくどく/三種二十九句荘厳功徳
阿弥陀仏の願心によって成就された極楽浄土における荘厳功徳の計二九句を、国土(一七句)・仏(八句)・菩薩(四句)の三種に大別した、その総称。また国土荘厳功徳は依報、仏荘厳功徳と菩薩荘厳功徳は正報に属するから二報三厳ともいい、また、この依報を器世間清浄、正報を衆生世間清浄とも呼称し、合わせて二種清浄という。これらの荘厳功徳は世親の『往生論』に説示され、それに対して曇鸞が『往生論註』において詳細に解釈を加えている。『往生論』には、国土荘厳功徳として①清浄②量③性④形相⑤種々事⑥妙色⑦触⑧水・地・虚空の三種⑨雨⑩光明⑪妙声⑫主⑬眷属⑭受用⑮無諸難⑯大義門⑰一切所求満足の一七句、仏荘厳功徳として①座②身業③口業④心業⑤大衆⑥上首⑦主⑧不虚作住持の八句、菩薩荘厳功徳として①不動而至②一時遍至③無心供仏④示法如仏の四句が説かれ、曇鸞は『往生論註』下において「此の三種の荘厳成就は、本四十八願等の清浄の願心の荘厳したもう所なるに由りて、因浄なるが故に果浄なり」(浄全一・二五〇上/正蔵四〇・八四一中)と述べ、清浄なる四十八願の酬因から生じた浄土の荘厳功徳もまた清浄であるとしている。また『往生論註』ではこの三種二十九句荘厳功徳を広となし、入一法句を略として互いに相入し合うものであるとされ、二種法身のうち、法性法身は入一法句なる略、方便法身は三種二十九句荘厳功徳なる広と示されている。なお三種二十九句荘厳功徳と無著の『摂大乗論』に説かれる十八円浄説との関係を指摘する説があるが、十八円浄説が諸仏一般の徳相を説いたものであるのに対して、三種二十九句荘厳功徳が阿弥陀仏の特定の浄土であることなどから両者の根本的な相違を指摘する説もある。
【参考】望月信亨「往生論と摂大乗論の十八円浄」(『浄土教之研究』金尾文淵堂、一九四四)、山口益『世親の浄土論』(法蔵館、一九六六)、藤堂恭俊「天親と曇鸞の浄土思想」(『講座・大乗仏教五 浄土思想』春秋社、一九八五)
【執筆者:後藤史孝】