「和語灯録」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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わごとうろく/和語灯録
五巻。『黒谷上人語灯録』の和語篇をいう。了慧道光編。文永一一年(一二七四)—同一二年に成立。道光が法然の遺文を蒐集編纂し『黒谷上人語灯録』としたもののうち、和文体の法語・消息類。道光は「巻第十一幷序」に「…ここにかの流を汲む人多き中に各義を取る事区区なり。…よてあるいはかの書状を集め、あるいは書籍に載するところのことばを拾う。やまとことばはその文見易く、その心解り易し。願わくは諸の往生を求めん人、これをもて灯として浄土の路を照らせとなり。もし落つるところの書あらば後賢必ずこれに続げ。…」(聖典四・二八二~三)と、往生を求める者の灯とすべく法然の書状を蒐め書籍から詞を拾った、と編集の目的を記している。巻一には『三部経釈』『御誓言の書』『往生大要抄』、巻二には『念仏往生要義抄』『三心義』『七箇条の起請文』『念仏大意』『浄土宗略抄』、巻三には『九条殿下の北政所へ進ずる御返事』『鎌倉の二位の禅尼へ進ずる御返事』『要義問答』『大胡太郎実秀へ遣わす御返事』、巻四には『大胡太郎実秀が妻室のもとへ遣わす御返事』『熊谷の入道へ遣わす御返事』『津戸の三郎へ遣わす御返事』『黒田の聖人へ遣わす御文』『越中国光明房へ遣わす御返事』『正如房へ遣わす御文』『禅勝房に示す御ことば』『十二の問答』『十二箇条の問答』、巻五には『一百四十五箇条問答』『上人と明遍との問答』『諸人伝説のことば』の計二四篇の遺文を所収している。版本にはまず龍谷大学図書館所蔵元亨元年(一三二一)印版のものが資料価値の高いものとしてある。次に京都大学・大谷大学・龍谷大学・大正大学等の各図書館に寛永二〇年(一六四三)印版の片仮名交じりのものがある。ほかに東京大学・東北大学・大正大学などの各図書館に所蔵される、正徳五年(一七一五)に義山が知恩院四二世秀道の命を受けて印刻したものがあり、昭和時代までよく流布したが、『漢語灯録』と同様に改変箇所が多いものとの評価が一般的となっている。古写本に残欠本ではあるが安居院西法寺(京都市上京区)所蔵本がある。
【所収】『黒谷上人語灯録(和語)』(『龍谷大学善本叢書』一五、同朋舎出版、一九九六)
【参考】中野正明『法然遺文の基礎的研究』第Ⅰ部第三章「『黒谷上人語灯録』について」(法蔵館、一九九四)
【執筆者:中野正明】