黒衣
提供: 新纂浄土宗大辞典
こくえ/黒衣
僧侶が着用する法衣のうち黒色のもの。通常服の一つで、黒色の直綴または半素絹の法衣。緇衣、墨染の衣、墨衣とも呼ばれている。律蔵によると、衣の色は黒・青・木蘭の三色と定められている。中国では壊色の緇泥色が儒教などの影響を受け、黒が用いだされた。四神の玄武は、黒と北にあたり、北極星を示し、高貴の色となった。墨片で染めた墨染の衣は、禅僧が多く着用し、日本では隠遁僧なども用いた。転じて、僧自体を指すこともある。「黒衣の宰相」は僧でありながら、国政を動かす人をいう。緇素とは、緇が黒衣、素が白衣のことで出家と在家との併称。黒衣は、現在、壊色として扱われ、修行の際に修行僧が着用したり、通夜葬儀の際に喪主・法類等が着用している。
【参考】『法衣史』(雄山閣出版、一九七四)
【執筆者:坂上典翁】