除災招福
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょさいしょうふく/除災招福
災いを除き、福を招くという意味。攘災招福ともいう。現世利益の一つ。奈良時代には護国経典を読誦することで国の災いを防ぐことが期待されたが、平安時代になると密教の将来によって、息災法や降伏法などの密教による修法が中心となっていった。やがて念仏や題目を称えることも用いられるようになる。浄土宗では、一四世紀中頃、知恩寺八世善阿空円が元弘元年(一三三一)に後醍醐天皇より疫病を鎮めるよう勅命を受け七日間百万遍念仏を修したところ、疫病が終息したため寺号に「百万遍」を賜ったといわれる。以降、百万遍念仏を称えると現世利益が叶えられるとされ、百万遍数珠繰りが地方でも盛んに行われるようになった。現在でも各地に残る虫送り・風送り・雨乞い念仏などが除災招福を願う民間念仏として伝承されている。
【参考】佛教大学民間念仏研究会編『民間念仏信仰の研究』資料編(隆文館、一九六六)
【執筆者:工藤美和子】