述懐鈔
提供: 新纂浄土宗大辞典
じゅっかいしょう/述懐鈔
一
一巻。『述懐記』ともいう。舜昌撰。一四世紀前半の成立。念仏門護教の書。内容は、日本に仏教が伝来して以来、聖徳太子・空海・最澄・山王権現・源信・承円・願行坊・顕真・慈円・良快・明禅が浄土門の念仏を称揚し、中国にあっては、慧思・智顗・灌頂・湛然も念仏を称えているというもの。著者の舜昌は、比叡山東塔功徳院の僧侶であったが、浄土門に帰依し、法然の伝記である『四十八巻伝』を著した。その功により知恩院九代の別当にも補せられたが、比叡山の衆徒からは批判を受けた。本書では、日本仏教の先駆者や、天台円教の祖師たちも念仏を称えているとし、自己の正統性を述べることによって、批判への応酬を行っている。
【所収】続浄九
【資料】『勅修円光大師御伝縁起』(浄全一六)
【参照項目】➡舜昌
【執筆者:東海林良昌】
二
毘沙門堂明禅の著書。『述懐抄』とも。一三世紀前半の成立。明禅は顕密兼学の名匠であったが、承久の乱前ごろ遁世して浄土教を信仰した。信空から『選択集』を送られて読み、鑽仰の思いを深め本書を著した。現存しないが『四十八巻伝』四一に引用され、『同』四三には本書を鳥部野に住む信寂房へ与えたという。道光の『新扶選択報恩集』『扶選択正輪通義』にも引用される。
【参照項目】➡明禅
【執筆者:善裕昭】