衣座室
提供: 新纂浄土宗大辞典
えざしつ/衣座室
如来の滅後、法師が『法華経』を弘通するために守るべき、大慈悲心・柔和忍辱の心・一切法の空という三種の規則を、仏衣・仏座・仏室の比喩に寄せたもの。衣座室の三軌、衣座室の三誡、弘経の三軌ともいう。『法華経』法師品によると、衣・座・室の三軌を「如来の滅後に、四衆のために、この法華経を説かんと欲せば、いかんが、応に説くべきや。この善男子、善女人は、如来の室に入り、如来の衣を著し、如来の座に坐して、しかしてすなわち、応に四衆のために、広くこの経を説くべし。如来の室とは一切衆生の中の大慈悲心、如来の衣とは柔和忍辱の心、如来の座とは一切法の空。この中に安住して、然る後に懈怠ならざる心をもって、諸の菩薩及び四衆のために、広くこの法華経を説くべし」(正蔵九・三一下)と述べている。智顗は、『法華文句』八上に、「〔法華経を〕読誦と書写すれば、これ外行にして即ち如来の衣、〔法華経を〕受持すれば、これ内行にして即ち如来の座、〔法華経を〕解説して他を益すれば、これ如来の室なり」(正蔵三四・一〇八上)として、三軌を五種法師に対応させて解釈した。また、後に円頓戒の思想の中ではこの衣座室の三誡が三聚浄戒と対応されている。
【執筆者:林鳴宇】