色心戒体
提供: 新纂浄土宗大辞典
しきしんかいたい/色心戒体
戒体についての二つの見解の総称で、天台大師智顗によって創始された戒法である円頓戒の戒体が色法(物質)なのか心法(心の作用)なのかという論題のこと。戒体とは、戒の実体すなわち戒が持たれていく原動力のことである。戒体説は説一切有部より始まり、立場やその扱いの違いにより論議され、中国・日本において特に重要視されてきた。色法戒体説は、『天台戒疏』の説に基づくもので、円仁(慈覚大師)正流の系統であり、黒谷流・鎮西流・法勝寺流の戒の系統である。心法戒体説は、智顗の『摩訶止観』『次第禅門』などを基に、日本天台宗の戒の系統、とくに恵心・檀那の両流や大原流などであるとされる。これは、前者が作法受得思想に立脚しているのに対し、後者が、乗戒一致思想に立脚していることから起こる相違であると考えられている。戒体論の論議が盛んになったのは鎌倉時代からであり、慈眼房叡空と法然との戒体論が『四十八巻伝』四に伝えられている。
【資料】『摩訶止観』四
【参考】恵谷隆戒「円頓戒の戒体論について」(『東洋文化論集 福井博士頌寿記念』早稲田大学出版部、一九六九)
【参照項目】➡戒体
【執筆者:薊法明】