盂蘭盆経
提供: 新纂浄土宗大辞典
うらぼんぎょう/盂蘭盆経
一巻。『盂蘭経』ともいう。西晋・竺法護訳。前半部は釈尊が目連の請に応じて、夏安居の終わり七月一五日に衆僧へ飲食などを盆に載せて供養することで、供養を受けた衆僧の呪願により過去現在の父母を餓鬼道から救うことができると説き、後半部は未来世の衆生も同じように仏と僧に供養することで、現生の父母は無病長寿を得られ、過去の父母は餓鬼の苦しみを逃れることができると説いた、報恩・孝順を勧める経典。本経の成立については様々な議論があり、経録では異訳とされる『報恩奉盆経』や本経前半部を原初形態とみなして、孝をはじめとする中国思想をもって後半部を付加し改編したとする説や、本経を抜粋簡略化したものが『報恩奉盆経』であるとする説などがある。こうした学説は、本経を疑経とする立場にもとづくが、近年、「盂蘭」の語はⓈodana(ご飯)の訳とし、インド成立の経とする学説が有力である。また本経に基づき、唐代以降『法苑珠林』に引用される『浄土盂蘭盆経』など中国撰述経典や、目連説話・変文・講経文などが数多く作られ、盂蘭盆会も盛んに行われた。なお、後代の説話は目連の孝をより強調する内容へと変化していく。註釈書は最古の慧浄『盂蘭盆経讃述』をはじめ、宗密『盂蘭盆経疏』、元照『盂蘭盆経疏新記』などがある。
【所収】正蔵一六
【参考】小南一郎「『盂蘭盆経』から『目連変文』へ—講経と語り物文芸とのあいだ—(上・下)」(『東方学報』京都七五~七六、二〇〇三~二〇〇四)、岡部和雄「『盂蘭盆経』の現在—回顧と展望—」(『宗教学論集』二六、二〇〇七)
【執筆者:石上壽應】