異の方便
提供: 新纂浄土宗大辞典
いのほうべん/異の方便
仏が衆生を教化・救済するために用いた特別な手段や方法のこと。『観経』に「仏、韋提希に告げたまわく。汝はこれ凡夫にして心想羸劣なり。いまだ天眼を得ざれば、遠くを観ずること能わず。諸仏如来に異の方便あり、汝をして見ることを得せしめん」(聖典一・二九二/浄全一・三九)とある。善導は『観経疏』でこの一文について、玄義分では「次下の日想・水想・氷想より、乃至十三観已来を尽く異方便と名づく」(聖典二・一八八/浄全二・一三上)と述べ、『観経』所説の異方便が定善十三観であることを指摘している。また序分義では「言〈諸仏如来有異方便〉より已下は、これ若し心に依って見る所の国土荘厳は汝凡の能く普悉するにあらずといいて、功を仏に帰することを明かす」(聖典二・二三六/浄全二・三三上)と述べ、定善が成就し極楽浄土依正二報の荘厳を目の当たりに感見したとしても、それは行者のみの修行の功徳ではなく、あくまでも仏の功徳に依るものであるとしている。
【執筆者:柴田泰山】