浄宗護国篇
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょうしゅうごこくへん/浄宗護国篇
一巻。観徹述、良信記。正徳二年(一七一二)観徹の序文によれば、祐天の口授を旧記と対照して、高崎大信寺の良信が筆記し、生玉法泉寺の珂然が校閲したもの。本書は参州大樹寺開山勢誉愚底大和尚伝・参州大樹寺中興登誉天室大和尚伝・武州増上寺中興観智国師伝・武州増上寺阿弥陀仏霊像記の四編からなる。本書の性格は松平親忠と愚底、徳川家康と天室・存応との交流や、家康の念持仏であった黒本尊の霊験譚をのせているなど、徳川家と浄土宗の関係性の深さを強調している。また祐天の口授は『松平崇宗開運録』などの書名で写本が流布した。注釈書に珂然『浄宗護国篇成語考』四巻がある。
【所収】浄全一七(漢文体)、『国民思想叢書』仏教篇上(大東出版社、一九三二)(和文体)、『日本精神文献叢書』一二(同、一九四〇)(漢文体の書き下し)、『祐天寺史資料集』五(祐天寺、二〇一〇)
【参考】平野寿則・大桑斉編『近世仏教治国論の史料と研究 松平開運録/東照宮御遺訓』(清文堂、二〇〇七)、大桑斉「徳川王権始祖神話の論理と性格—『松平崇宗開運録』の論理—」(『日本仏教の形成と展開』法蔵館、二〇〇二)
【執筆者:石川達也】