宗源
提供: 新纂浄土宗大辞典
そうげん／宗源
一
仁安三年（一一六八）—建長三年（一二五一）七月三日。乗願房、竹谷上人とも称す。法然面授の門人。三条長方の息子で、従兄弟に顕真、明禅、甥に信空、妻の兄に遊蓮房円照、明遍などがいる。はじめ仁和寺において真言宗を極め、悉曇を学び、天台宗にも通じていたが、法然に帰依した後は単心念仏につとめ、深く名利を厭い、醍醐の樹下谷に隠居し、また、清水寺の東南の竹谷にも住んだ。入門の時期は不明であるが、法然に仕え教えを受けること多年であった。名利を厭って隠遁を好み、求道の心を隠して医師と称し、音楽のことも語っていたという。亡魂の菩提には宝篋印陀羅尼と光明真言が勝れていると答えるなど、その諸典籍の文義を重んずる教えは竹谷義と呼ばれた。三祖良忠は、法然に面授した門人として宗源を尊び、宗源は、法然滅後に門下が分流して京都に興盛する教えは法然の教義ではなく、鎮西義が正しいと良忠に語ったという。帰依者には東二条院公子（後深草天皇の中宮）、弟子には妙仏・専心がいたが、その門流は大きく発展しなかった。『和語灯録』五の「諸人伝説の詞」に、宗源が法然から聞いた色想観、三心の具足、往生の思いについての三種の遺文を収録する。
【資料】『四十八巻伝』四三、『疑問抄』上（浄全一〇）、『翼賛』四三、四九、五二（浄全一六）、『総系譜』上・下（浄全一九）、『尊卑分脈』二（『新訂増補国史大系』五九）
【参考】菊地勇次郎「乗願房宗源」（『源空とその門下』法蔵館、一九八五）
【参照項目】➡乗願上人伝説の詞
【執筆者：山本博子】
二
鎌倉中期の天台僧で宝地房証真の嫡弟。竹中法印、宝地房法印と呼ばれた。天台顕教を専門とし数々の仏事導師や三講の講師・証義を勤めた実力者で、法印権大僧都となり延暦寺探題・祇園別当に就いた。『醍醐本』『四十八巻伝』『知恩伝』『十巻伝』によると、法然と対面して浄土立宗の根拠を問うと、法然が『観経疏』付属の釈文に依る旨を答え、わずか一文での立宗は根拠不十分と再び問うと、法然は微笑し、比叡山に帰り証真に法然が答えに窮したと報告すると、証真は回答するに値しない質問だったからだと宗源を注意したという。また嘉禄の法難では、安居院聖覚らと専修念仏停止を朝廷に働きかけているなど、浄土宗への批判的な姿勢が目立つ。
【資料】『法勝寺御八講問答記』、『最勝講問答記』、『平戸記』、『岡屋関白記』
【参考】平雅行「安居院聖覚と嘉禄の法難」（『日本中世の社会と仏教』塙書房、一九九二）
【執筆者：善裕昭】
三
一七世紀頃の人。生没年や出生地などは不詳。浄誉。寛永一五年（一六三八）、金戒光明寺山内に宝樹軒を建立したと伝えられる。宝樹軒は文殊塔の北側に建立され、明暦元年（一六五五）に実相庵と改められたが、明治三一年（一八九八）に光安軒（現・光安寺）と合併した。なお『蓮門精舎旧詞』三五（続浄一九）には、紀伊国照念山光明寺の開山とされるが、年代が合わない。
【資料】『黒谷光明寺誌要』（浄全二〇）、『京都坊目誌』上・二七（『新修京都叢書』一九、臨川書店、一九六八）
【執筆者：加藤弘孝】