四向四果
提供: 新纂浄土宗大辞典
しこうしか/四向四果
原始仏教の修行階位の一つ。原始・アビダルマ仏教で説くが、大乗の立場からは小乗の修行階位とされる。四沙門果、四双八輩ともいう。①預流(ⓈsrotāpannaⓅsotāpanna)②一来(Ⓢsakṛd-āgāminⓅsakad-āgāmin)③不還(ⓈⓅanāgāmin)④阿羅漢(ⓈarhatⓅarahanta)のそれぞれに向(向かって修行する段階)と果(到達した境地)をたてる。預流向は三界の見惑(八十八使)を断じ、一五心までをいい、この境地を見道という。第一六心で修道に入り預流果となる。ここに達すれば、もはや三悪趣に堕ちることがない。一来向は欲界の修所断の九品のうち、前六品を断ずる位で、一来果は断じ終わった境地をいう。不還向は修所断の残りの三品を断ずる位で、不還果は断じ終わった境地。ここでは、再び後戻りすることがないので不還という。阿羅漢向は阿羅漢果にいたるまでの位。ここまでの境地を修道という。阿羅漢果は見惑、修惑をすべて断じた涅槃の境地でこの境地を無学道という。大乗の『法華経』随喜功徳品や『アヴァダーナシャタカ』によると、一瞬にして四向四果のいずれかに達するという。南方の『清浄道論』では、戒・定・慧という三学で説明し、その深まりによって順に四段階に進むという。
【資料】『俱舎論』三
【参考】櫻部建『存在の分析—アビダルマ』(角川書店、一九九六)、西村実則「初期インド仏教にみる天界と出家」(正大紀要九四、二〇〇九)
【執筆者:西村実則】