アヴァダーナ
提供: 新纂浄土宗大辞典
アヴァダーナ/ⓈavadānaⓅapadāna
原語は現存の五部四阿含よりも古い経典分類形式である十二分教(十二部教)の一支を指すが、その原意はいまだ明らかではない。その言葉の意味から、輝かしい遂行、英雄的な行為・偉業、ブッダおよび仏弟子の高貴な行為に関する物語などと定義されたりするが、これは実際に「アヴァダーナ」を冠する説話の内容と必ずしも一致しない。よって、その内容面から「弟子や信者の現在事を説明するのに前生過去事を持ち来たり、その因果応報の理で結びつける物語」と定義されることもある。確かにアヴァダーナと呼ばれる物語は、現世の楽果・苦果を前世の善業・悪業で説明するものが多いが、中には明らかにジャータカでも「アヴァダーナ」と呼ばれる話も存在する。一方、この語は「譬喩」と漢訳されることから、これを教訓譬喩と解し、誰かを教戒する目的で使われる話は、内容がジャータカでも「アヴァダーナ」と呼ばれていた可能性を示唆する研究者もいる。これはその「内容」ではなく「機能」という観点から「アヴァダーナ」を定義したもので、興味深い解釈である。
【参考】平川彰「大智度論における阿波陀那について」(『初期大乗と法華思想』〔『平川彰著作集』六〕春秋社、一九八九)
【執筆者:平岡聡】