出家唄
提供: 新纂浄土宗大辞典
しゅっけばい/出家唄
得度式で剃髪しているときに唱える声明。毀形唄ともいう。「毀形守支節 割愛無所親 棄家弘聖道 願度一切人」。書き下しは「形を毀ち支節を守り、愛と割れて親とするところなし。家を棄て聖道を弘め、願わくは一切の人を度せんことを」。「身は僧の姿にやつした上は、仏の教えを弘め、一切の人を救おう」との意。『諸徳福田経』(正蔵一六・七七七上)では「支」が「志」、「棄家」が「出家」となっている。また『四分律刪繁補闕行事鈔』では、「支」を「志」とし、『度人経』に出るとするが、この経は失訳。浄髪師は屛所で頭頂の五三の周羅髪のみ残して華髪を剃る。俗服から法衣に着替え、屛所より和上の前に進む。この間唄師は出家唄を唄える。和上は確認してから頭頂の周羅髪(稚髪)を剃る。そして法諱、袈裟を授与した。近年は式の簡略化に伴い、予め剃髪していることがある。『天台声明大成』(金声堂、一九六八)には、云何唄の墨譜と同じとある。祖山流声明では、呂曲双調。『浄土宗声明集』(知恩院、二〇一〇)には相伝曲であるため、回旋譜が掲載されていない。縁山流声明では、光明伽陀等の譜によって呉音で唱えられているが、『声明集』(天和三年〔一六八三〕)の譜には漢音のルビが附されている。後半の偈文を「一心弘仏道 願生常称名」とする説もある。
【資料】『尊峰法親王御得度式』(宝暦四年〔一七五四〕・写本)
【執筆者:西城宗隆】