他力之十喩
提供: 新纂浄土宗大辞典
たりきのじゅうゆ/他力之十喩
阿弥陀仏の本願力(他力)が不可思議であることを示す一〇の譬喩。滅罪の喩(四)、生善の喩(四)、総喩(二)に大別される。源信『往生要集』下に説かれ、「他力之七喩」と同趣旨のもの。①栴檀の木が芽を出せば、四〇由旬の伊蘭林もすべて香美になる。②獅子の筋で琴を奏でれば、その他の弦はすべて断ち切れてしまう。③一斤の仙薬は千斤の銅を金に変えることができる。④金属の中で最も硬い金剛石(ダイヤモンド)も、黒い牡羊の角で叩けば氷のように解けてしまう(以上、滅罪の喩)。⑤ヒマラヤ山に生えている忍辱草を牛に食べさせれば、五味のうち最上となる醍醐を得ることができる。⑥娑呵という妙薬を見れば無量の命を得ることができ、念ずれば六神通の一つである宿命智通を獲得できる。⑦孔雀は雷鳴を聞くと受胎する。⑧合歓木は昴星が出ると実をつける(以上、生善の喩)。⑨如意宝珠を身につければ、深い水の中でも決して溺れることがない。⑩砂礫は小さくても水に浮かばないが、大きな岩でも船に乗せれば浮かべることができる(以上、総喩)の一〇喩であり、『往生要集』ではこれらの譬喩によって念仏の功徳を信ずべきことが強調されている。
【参照項目】➡他力之七喩
【執筆者:杉山裕俊】